「主人公がやばい本」

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『むらさきのスカートの女』のネタばれ感想

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「むらさきのスカートの女」はザ・陰キャという感じで、とある町では変な奴という意味でなぜか有名になっている様子。この話はそんな「むらさきのスカートの女」を観察する、自称「きいろいカーディガンの女」が主人公の話です。

<以下ネタばれ感想あり>

…と思いきや。語り手であるこの主人公のほうがよっぽどやばい奴だというのが徐々にわかってきて、その過程がゾクゾクして怖いような面白いような、今までにない読み心地の本でした。

「むらさきのスカートの女」は自己肯定感が低めの陰キャで、仕事がない日はいつも同じ席で同じパンを食べていて、そこで子どもたちにからかわれていて、人混みをすり抜けるのが得意で…。変わっているけど別に有名になるほど変な人ではない気がします。「きいろいカーディガンの女」はそんな「むらさきのスカートの女」が気になって友達になりたいと思って、粘着ストーカーをしています。端々から伺える周りの反応を見るに、主人公のほうがよっぽどやばい奴判定されている気がするので、「むらさき」のほうはやばい奴に目をつけられただけの人物だったのでは。

「むらさき」は「きいろ」に誘導される形で働きだした職場で、自信をつける一方、所長に目を付けられ不倫の関係になり、先輩たちに後ろ指を刺され始め、最後には所長と揉めて突き落としてしまうという、ありがちのような展開。そこで、所長を殺してしまったと狼狽える「むらさき」の前に突如現れる「きいろ」の言動に衝撃と恐怖で打ちのめされました。

「きいろ」のカーディガンが上半身で、「むらさき」のスカートが下半身の同一人物なんじゃないか?

と思わせられる部分もありますが、それぞれ人物名が判明しているしストーリー上は完全に独立した存在として認知されているので、実際は違うんでしょう。

ただ、私が好きな村上春樹著作の「羊をめぐる冒険」に出てくる「僕」と「鼠」のような、同一人物説を彷彿させました。

文学的に何かの暗示を感じさせられて考察のしがいがありそうです。

(そういう点でも、純文学部門として芥川賞をとっているのでしょう)

いつか、主人公がやばい作品を特集してみたいです。

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